言葉は、発音として、まず、耳より入ってきます。

ですから、子供が言葉を覚える過程は結構忙しく、あれはローソクよ、と言って母親が教える

言葉の、まず音節を区別しなければなりません。

あれ、が一音節なのか、それとも、あれはローソ、が一音節なのか、の一大事です。

と同時に、母親の指さす彼方にあるものが、ロウソクなのか、イチゴなのか、クリームなのか、

あるいは、ケーキ全体なのか、それとも、指さす指のことなのかを区別しなければなりません。

何度も何度も繰り返すうちに、ローソクとは、イチゴでもなく、クリームでもなく、全体でも

なく、指さす指でもない、残された一つが、ローソクだと知ります。
そのようにして覚えた言葉に、われわれは反応します。

ローソクを見ろと言われれば、ローソクを見るようにです。

ですが、そこに存在しているのは、ローソクではありません。

ローソクという言葉によって存在する抽象であり、言葉の国に住む住人です。

その住人を通して、われわれは存在を望み記述します。

いま、宇宙という言葉が存在します。

ですが、宇宙が存在しているのではありません。

宇宙という抽象など、存在することはないからです。
流転する万物の背後に、自身は流転することなく、流転を記述している存在が存在します。

その存在を記述しなければなりません。

いま、物理法則が存在します。

地球は、物理法則の記述に従い公転しています。

ですが、物理法則が存在しているのでもありません。

物理法則の最大の保存則は、物理法則自身の保存です。

物理法則を物理法則として保存している何かを、その正体を記述しなければなりません。

言葉の国を成り立たせている存在の正体としてです。
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